佐々木厳太郎教授の財務管理論3
佐々木教授が雑務助手に、
「掲示―」
と大喝すると、4人の雑務助手と院生が手分けして新聞の株価欄を何十倍にも拡大した紙を黒板に貼り出した。
私が驚愕して黒板に貼り出された株価欄の銘柄名とその騰落率に眼を奪われていると、壇上の佐々木教授が雑務助手に合図を送り、雑務助手がテープ・レコーダーのスイッチを押すとワグナーの「ワルキューレの騎行」を大音量で流しはじめた。
「やめたまえ。これは戦争賛歌の音楽だ!!」
たまらず私は叫ぶが、佐々木教授の大音量のマイクロフォンの声はとどまることを知らない。
やがて、4人の研究助手が4桁の数字が書かれたカードを学生に配り始めた。
大教室が戦闘的な雰囲気に包まれはじめた。
「諸君。これだけの銘柄が株式市場に上場している。その会社数は4000を超える。
諸君はまずどの銘柄がどのセクターに属し、どのような活動をおこなっているか知るが良い。その為には、」
佐々木教授が黒板に「EDINET」と書くと、
「これはEDの治療機関ではありません。まずインタ-ネットで“EDINET”と入力してみて下さい。
これはElectoric Data Investor‘s Networkの略語です。
日本語に訳すと、『証券取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム』
官僚用語は長ったらしくて嫌ですね。それはそれとして、
ここから諸君の手元に渡った4桁の数字の銘柄の有価証券報告書をEDINETからダウンロードして、200ページくらいありますよ、投資に適するか否か、明智大学所定のレポート用紙4枚にまとめて提出して下さい。
諸君ははじめてのことであろうし戸惑いもあるであろうから、提出期限は再来週とする。
よって今回の講義は終了。来週は休講とする」
佐々木教授は呵呵大笑すると、いそいそと4桁の数字の書かれたカードを配る研究助手をよそめに、壇上から降り、私の肩を抱くと、
「さあ、本日の講義はこれにて終了です。長岡佐渡教授、飲みに行きましょう」
と言った。

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