佐々木厳太郎教授の告白1
私は憤然として佐々木教授の腕を振り払うと、
「断る。あなたの教育方針は実務家の要請に応えすぎている。私が学生運動の時に反対を叫んでいた産学協同そのものだ」
と言うと、佐々木教授は必死に、
「待ってくれ。私はあなたが教授陣と争って東京国立大学を追われたのを知っている。私はあなたと会って同じものを感じた。私も大学の派閥抗争で大変な屈辱を味わった。その葛藤(トラウマ)をお互い飲んで晴らしたいのだ」
と叫ぶようにいった。 瞬間、私も彼と同じものを感じた。
「わかりました。私も告白しましょう。じつは私も学問を講ずるといつも罪悪感にさいなまれてしまうのです」
すると、佐々木教授は得たり、とばかりに、
「やはりそうでしたか。私もあなたと同じ罪悪感の塊なのです。日々、実務家よりの授業を講じるうちに芽生えてきた、大学人は学問の真実を講ずるべき、という自責の念。しかしながら、私はあえて実務家よりという仮面をとって講義をして参りました。これには訳が・・・・・」
「もういい。私にはわかっている。君の・・・・・」
と言いかけると、後ろで何かいいたげにたたずんでいた学生があきれたように、ともに抱きあわん、とばかりに会話をしていた私たちの中に割って入ってきた。
「佐々木先生、実は僕、閉所恐怖症なんです。先生が大教室の扉を鎖で施錠したとき、私はとてつもない恐怖を感じました」
すると、佐々木教授は
「おお、君もマイナーな精神病を抱えていたのか、すまん、君の気持ちがわからずに僕は・・・・・」
佐々木教授は巨体を揺すりながら大学の回廊で号泣した。

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